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ニッセイ緑のオンライン環境講座④~マツ~(講師:林 将之氏/樹木図鑑作家)

《テーマ》学校の樹木トップ20紹介④『マツ』

お正月に、神社や校門に門松(かどまつ)が飾られることも多いでしょう。その名の通り、門松にはマツが飾られています。今でこそ3本のタケが目立ちますが、神様を迎え入れるために昔から飾られてきたのは、マツが最初であったといわれます。マツは現在では童謡「まつぼっくり」でも親しまれ、子どもたちにもよく知られた木といえるでしょう。



日本でマツと呼ばれる木には、アカマツ、クロマツ、ゴヨウマツの主に3種があります。アカマツは幹が赤く、山の尾根ややせ地に生える「山の松」、クロマツは幹が黒く、海岸の林や岩場に生える「海の松」です。ゴヨウマツは、山奥の岩場に生えるやや珍しい木で、盆栽に人気があります。



そんなマツ類が、ニッセイ緑の財団による学校の樹木名プレート設置数ランキングで、第4位に入りました。内訳は、多い順にクロマツ、マツ(総称)、アカマツ、ゴヨウマツ、ダイオウマツとなっています。クロマツが最も多いのは、アカマツより大気汚染に強くて丈夫なためでしょう。ダイオウマツは北アメリカ原産で、葉の長さが40cmにもなるマツです。



校庭や庭に植えられたマツといえば、曲がった幹から左右に伸びた枝に葉がのった、独特の姿がイメージされます。これは、険しい岩山や潮風の吹きつける海岸に生えた野生のマツの樹形を、人為的に仕立てて再現したものです。ですから、その姿を維持するための手入れが必要で、庭師さんが毎年枝を切ったり曲げたりして形を整えているはずです。そんな校庭のマツは、厳しい社会を生き抜く姿のようにも、きちっと身だしなみを整えた姿のようにも見えます。



ではなぜ、マツがお正月に飾られるのでしょう? 日本には松竹梅(しょうちくばい)という言葉があり、マツ、タケ、ウメをおめでたい植物として祝い事などで飾る風習があります。マツは一年じゅう青々とした葉をつけるため、昔から不老長寿の象徴とされてきました。数ある常緑樹の中でマツが選ばれたのは、恐らく、長寿で大木にもなることや、寒い地方では常緑樹が少ないので、雪山にも生えるマツの生命力が特別視されたのだと推測します。



また、昭和の前半まで日本では、まきや炭を得るために山の木々を大量に切っていたため、ハゲ山によく育つマツの林があちこちに広がっていました。マツ自体も松ヤニを含んでよく燃えるので、強い火力が必要な焼き物や製鉄用の燃料に重宝されていました。今は石油やガスばかりを使うようになり、山の木を使わなくなったので、ほかの広葉樹が増え、マツはどんどん減っているのです。



なお、マツのように針状の葉をつける針葉樹では、ほかにヒマラヤスギが18位、マキ類(主にイヌマキ)が19位にランクインしました。ヒマラヤスギは、スギの名がつきますがマツの仲間で、枝葉がうっそうと垂れ下がった樹形で、巨大な松ぼっくりをつけます。イヌマキは暖かい西日本に多い木で、葉は平べったい形ですが、マツ同様の樹形によく仕立てられます。



このように針葉樹は、葉、樹形、性質に個性的なものが多いといえます。ほかの多くの木とは異なることで、シンボルツリーや有用樹として際立つことも多いのです。人間の場合も、マツのような個性を大事にしたいものです。

(林将之/樹木図鑑作家)



★当シリーズのこれまでの講座について

(第1回講座)https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3270397186326628

(第2回講座)https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3287818484584498

(第3回講座)https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3304937162872630



★講師について

当講座の講師の林将之氏は、当財団が2019年度より全国の小・中学校等に提供している「学校の木のしおり」の作成に携わっていただいております。



★「学校の木のしおり」の提供について

ニッセイ緑の財団では、現在学校の木のしおりの活動実施校を募集中です!

ご興味のある方は以下URLより募集ビラ・募集要項をご確認の上当財団宛にお申込みください(お申込みはメール・FAXどちらでも可能です)。

(HP記事)

http://www.nissay-midori.jp/topics/details/776

(FB記事)

https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3263263873706626



※当講座は『毎週木曜日』に登載予定です!



 



1:野生のクロマツ。風が強い場所では幹が曲がって風流な樹形になる。





2:アカマツ(赤松)が飾られた門松。門松は年神様を迎え入れる目印の役割がある。





3:野生のアカマツ。幹は赤く、条件がよいと比較的まっすぐ伸びる。





4:クロマツ(黒松)の松ぼっくり。上に見えるのは若葉の芽吹き。





5:よく手入れされた庭木のクロマツ。





6:盆栽のような樹形に仕立てられた庭木のゴヨウマツ(五葉松)。成長が遅く、葉が密につく。





7:左のクロマツと中央のアカマツの葉は2本ずつつき、右のゴヨウマツの葉は5本ずつつく。





8:広場に植えられたヒマラヤスギ。枝を切らなければ整った三角形の樹形になる。





9:ヒマラヤスギの松ぼっくり。長さ10cm前後で秋〜冬に熟してばらける。





10:イヌマキ(犬槙)の若い実。秋〜冬に赤〜紫色に熟して食べられる。




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