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ニッセイ緑のオンライン環境講座⑨~ケヤキ、サルスベリ~(講師:林 将之氏/樹木図鑑作家)

《テーマ》学校の樹木トップ20紹介⑨『ケヤキ、サルスベリ』



「木の形をイメージして」と言われて、どんな樹形を思い浮かべるでしょうか?三角形の樹形や、モコモコした樹形をイメージする人も多いかもしれませんが、センスを広げたような、おうぎ形の樹形を思い浮かべる人もいるでしょう。そのおうぎ形の美しい樹形を代表する木が、ケヤキ(欅)です。



「けやけき木」が名の由来といわれ、古語の「けやけし」は、際立って目立つこと、優れていることを意味します。家具材などに重宝されるケヤキの木材の質や、木目の美しさに加えて、その優雅な樹形をも称えた名前と思われます。



ケヤキは山地〜低地の谷沿いに生えるニレ科の高木で、日本屈指の大木になる広葉樹であり、神社やお寺、公園にもよく見られます。特に本州の東半分に多く、関東平野や仙台平野などでは、屋敷林(民家を囲う防風・防火用の林)や雑木林にもケヤキが目立ち、郷土風景のシンボルにもなっています。



ケヤキの並木道も人気が高く、有名な東京の表参道や、仙台の青葉通りをはじめ、日本一長いケヤキ並木とされる埼玉の国道463号線などが知られ、全国的にも街路樹に増えています。ケヤキの紅葉は個体差が多く、1本ずつ赤、オレンジ、黄色と異なった色に紅葉するので、秋の並木道は特に華やかです。



また、校庭や広場に単独で植えられたケヤキは、樹冠を大きく広げた立派な樹形になり、シンボルツリーにもぴったりです。ニッセイ緑の財団による学校の樹木名プレート設置数ランキングでは、ケヤキが第12位に入りました。思ったより順位が低いのは、このランキングは「カシ類」「ツツジ類」「モクレン類」などの総称で集計しているためで、個別の名称ごとの集計では、これらを抜いて第8位となっています。



ケヤキの葉は、ふちに並ぶギザギザ(鋸歯:きょし)のアウトラインがカーブしていることが特徴です。よく似たムクノキの鋸歯は、角張っています。同じくよく似たエノキは、葉の先半分にのみ鋸歯があることが違いです。



これら3種は樹形も似ており、しばしば同じ環境に生えるので間違えやすく、かつては「ニレ科三兄弟」とも呼ぶ人もいましたが、近年の遺伝子解析の結果、ムクノキとエノキはアサ科に“異動”になりました。植物の世界も、DNA鑑定によって次々と分類が変わっているのです。



ケヤキのもう一つの大きな特徴は、樹皮です。若い幹の樹皮はスベスベした灰色で、まるでコンクリートのようですが、年を取るにつれて、樹皮の一部がウロコ状にポロポロはがれ始め、老木ほど全体の樹皮がはがれて独特のまだら模様になります。少し見慣れれば、この樹皮の模様だけでケヤキと見分けられます。



樹皮が個性的な木といえば、サルスベリ(猿滑り)も有名です。こちらは中国原産のミソハギ科の小高木で、学校の樹木ランキングでも第17位に入っています。名の通り、サルも滑りそうなほどツルツルしたオレンジ色の幹が特徴で、こちらも慣れれば樹皮だけで見分けられます。



サルスベリは、7月から10月にかけて紅色や白色の花を100日間ぐらいも咲かせることから、ヒャクジツコウ(百日紅)の別名もあります。コロナ禍の影響で夏休みが短くなる可能性の高い今年は、校庭で鮮やかなサルスベリの花を眺められる日が増えるかもしれません。詰め込み授業のストレスが心配される子どもたちや先生方が、少しでも癒されることを願っています。



(林将之/樹木図鑑作家)



 



★当シリーズのこれまでの講座について



《前回(第8回)講座》https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3397884403577905



※前々回以前の講座は上記URLよりご確認いただけます。



★講師について



当講座の講師の林将之氏は、当財団が2019年度より全国の小・中学校等に提供している「学校の木のしおり」の作成に携わっていただいております。



★「学校の木のしおり」の提供について



ニッセイ緑の財団では、現在学校の木のしおりの活動実施校を募集中です!



ご興味のある方は以下URLより募集ビラ・募集要項をご確認の上当財団宛にお申込みください(お申込みはメール・FAXどちらでも可能です)。



(HP記事)



http://www.nissay-midori.jp/topics/details/776



(FB記事)



https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3263263873706626



※当講座については『毎週木曜日』に登載予定です!



 



 



1:東京都渋谷区表参道のケヤキ並木。道路を覆うおうぎ形の樹形が美しい。





2:山梨県の神社の境内に生えたケヤキの老木。





3:赤、オレンジ、黄色に紅葉した公園のケヤキ。





4:ケヤキの果実は、小さな葉のつけ根につき、目立たない。春に咲く花も地味。





5:広場に植えられたケヤキ。冬は放射状に広がった繊細な枝ぶりが美しい。





6:左からケヤキ、ムクノキ、エノキの葉。鋸歯の形や、葉脈の走り方が異なる。





7:樹皮がよくはがれたケヤキの幹。パズルのような特徴的な模様になる。





8:サルスベリの幹。樹皮がはがれてスベスベになり、ややまだら模様にもなる。





9:花をつけたサルスベリの樹形。





10:サルスベリの花びらはちりぢりで独特。葉はタマゴ形で鋸歯はない。





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