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生物多様性の保全に資する森林づくり

生物多様性の保全に資する森林づくり

生物多様性の保全は、気候変動の問題と並び、次世代にわたって持続可能な社会経済システムを維持していく上で最も重要な課題と認識され、取組の強化が急務とされています。具体的には、「2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せるための緊急の行動をとる」という国際的な目標(ネイチャーポジティブ)が掲げられており、その成果指標として陸と海の30%以上を健全な生態系として保全するという目標(30by30目標)が掲げられています。
このような中、わが国の陸域の中で最大の生物種の宝庫とされる森林は、生物多様性の保全上重要な地域となっています。

また、石油などの化石燃料が広く普及する前の時代に薪や木炭の原料採取のため盛んに利用されていたコナラやクヌギなどの広葉樹二次林や、それらと混在する農山村の集落、田畑、ため池などから構成される、いわゆる「里地里山」の地域においては、農林業をはじめとする人間からの働きかけを通じて奥山の森林とは異なる特有の自然環境が形成されており、生物多様性の保全上重要な役割を担ってきましたが、近年の利用・管理の低下により生物種の構成や多様性に変化が生じつつあります。

従来から広葉樹を含む多様な郷土樹種を積極的に取り入れた森林づくりを推進してきましたが、生物多様性の保全に関する社会的関心が高まる中で、豊かな里地里山の生態系が息づく自然共生サイトの認定地・OECM(国際データベース)の登録地を“ニッセイの森”として設定するなど、多様な動植物の生育・生息に資する森林づくりを本格化させています。

 ”おおくす芦名堰の森”での取組

「芦名堰」は三浦半島中央部・大楠山(横須賀市)の山裾に位置する農業利用の役割を終えた「ため池」で、周囲を広葉樹二次林や湿地に囲まれた水辺として、「里地里山」に特徴的な在来種をはじめ多様な動植物からなる生態系が息づいています。

ここでは、従来から住民団体により希少動植物の保護、外来種の駆除等の環境保全活動や小学生への環境教育活動が行われていた経緯があり、これらの活動を当財団が引き継ぐ形で環境省から「自然共生サイト”おおくす芦名堰の森”」として認定
(2025年3月)されるとともに、「OECM」として国際データベースに登録(同年8月)されました。
今後は、認定申請に当たり策定した活動計画・モニタリング計画に基づき、将来にわたり生態系の保全を図ってくこととしています。

 "おおくす芦名堰の森は、全国の”ニッセイの森”の中で、生物多様性の保全を活動の中心に位置付けた初めてのフィールドで、ここを拠点としてノウハウの蓄積を図りつつ、新たな活動地も探索していきます。

 
あしなぜきとは
 

 ”おおくす芦名堰の森”の動植物

芦名堰の池の周囲には、カラスザンショウ、シロダモなどが生育する広葉樹二次林やヨシやミゾソバなどが優占する湿地が分布しており、自然共生サイトの認定申請時点において123種の植物の生育を確認しています。
また、水辺や周囲の環境を反映し、アオサギ、カワセミ等17種の鳥類、ショウジョウトンボ、シオカラトンボ等73種の昆虫類、モツゴ等3種の魚類、ヤマトヌマエビ、マメゲンゴロウ等28種の底生動物の生息を確認しています。

これらの動植物種の中には、環境省レッドリストや神奈川県レッドデータに挙げられている複数の希少種が含まれている一方、トキワツユクサ、ツルニチニチソウ、タイワンリス等の侵略的な外来種も含まれており、希少種の保全や外来種の駆除等の環境保全活動を行っています。

今後の保全活動を通じてより豊かな生態系を形成しつつ、継続的なモニタリング調査を通じ生物相の変化を把握し、次代の活動に反映してまいります。 
希少種について
 

「自然共生サイト」と「OECM」

「自然共生サイト」とは、生物多様性の損失を止め反転させる「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた取組の一つとして、企業の森や里地里山など「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を環境省が認定する仕組みのことです。

「OECM」とは、保護地域以外で生物多様性保全に資する区域のことです(Other Effective area-based Conservation Measuresの略称)。
 自然共生サイト”おおくす芦名堰の森”については、サイト全域が「OECM」として国際データベースに登録ています。


 
希少種の保護活動