1. 主要ページへ移動
  2. メニューへ移動
  3. ページ下へ移動

ニッセイ緑の財団ニュース

記事公開日

最終更新日

411.《オオシロカラカサタケ(大白唐傘茸)(キノコ類)》

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

411.《オオシロカラカサタケ(大白唐傘茸)(キノコ類)

近年、身近でよく見るキノコです。元々は、熱帯~亜熱帯に見られたキノコで、今では分布域は広く、アメリカ大陸では北はニューヨーク州から南はブエノスアイレスに及びます。また、アフリカ大陸やインド、東南アジア、ヨーロッパでも見られます。日本では南西諸島でよく見られ、本州でも散発的に発見されていましたが、温暖化の影響か分布は北上し、西日本から関東まで極めて普通となり、北陸や東北でも発生が確認されています。
春から秋まで見られ、傘は5~20cmで、褐色の表皮は裂け白色綿状の地肌が現れ、黄褐色の鱗片が傘に残ります。ヒダは密で、初め白色で、胞子が成熟してくるとオリーブ褐色になるのが特徴的です。柄は白色から灰褐色で厚いツバを持ちます。ツバは柄に密着せず、上下に動かすことができます。1980年頃、大阪市内の街路樹の植え込みでオオシロカラカサタケを初めて見ましたが、暗緑色のヒダは今までのキノコで見たことのない色で印象に残っています。
腐生菌で腐植の多い地面から発生しますが、林よりも公園の芝生、校庭、路傍、もみ殻などによく見られます。地球温暖化とヒートアイランドのような都市環境に適合したキノコかもしれません。
カラカサの名前を持ち形態が少し類似しているキノコとしては、カラカサタケやマントカラカサタケがあり、雑木林に多く、柄も長く30cm以上の高さになることもあります。傷つくと赤く変色し、主に竹林などに生えるドクカラカサタケや、オオシロカラカサタケと同属とされているイロガワリシロカラカサタケなども知られています。ヨーロッパではカラカサタケは好んで食用にされており(生食は毒)、スペインのキノコレストランでは採ったカラカサタケを売りに来る人を見たことがあります。
一方、オオシロカラカサタケは強い毒性を持つキノコです。1960年代には沖縄地方で複数の中毒例が報告されています。石垣島で中毒した人の話では、食後30分ほどでむかつきが始まり、嘔吐と下痢が交互に襲い、激しい腹痛もあり、地獄の苦しみとはこのようなものかと思ったそうです。その後、本州でもこのキノコによる中毒が散発しており、9名の集団中毒もありました。身近で見られるキノコですが、絶対に試食などしてはいけません。
平尾信三氏(NPO法人千葉県森林インストラクター会会員・日本菌学会終身会員)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加