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ニッセイ緑の財団ニュース

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403.《タマゴタケ(卵茸)(キノコ類)》

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403.《タマゴタケ(卵茸)(キノコ類)

林内で真っ赤な傘が目立つ美しいキノコです。テングタケの仲間で深紅の傘と黄色の襞(ヒダ)、黄色と橙色のダンダラ模様の柄、橙色のツバを持ち、白い卵(ツボ)の中から伸びてくるさまは卵茸の名前にふさわしいものです。主に初夏から夏にかけて発生し、ブナ科の樹木やカバノキ、モミ、ツガなど種々の樹下に生え、これらの樹と菌根を形成します。以前は西洋でシーザーのキノコ(Caesar’s mushroom)とも呼ばれるキノコと同じ種として扱われていましたが、世界的に類似種も多く、学名も何度か変更されました。さらに、2024年にはDNAに基づく分子系統解析、分布域、培地上での菌糸生長、胞子のサイズなどから、日本には、タマゴタケとサトタマゴタケの2種類があることが報告されました。タマゴタケは亜高山帯~冷温帯、サトタマゴタケは温帯~亜熱帯に分布するとされています。肉眼的には区別がほとんど付かないようです。
近縁種では色の違うキタマゴタケ、チャタマゴタケ、石垣島で見つかったフチドリタマゴタケなどが日本では見られます。傘がオレンジ色で柄にダンダラ模様が不明瞭なセイヨウタマゴタケに似た種類もあるようで、日本でも今後さらにタマゴタケ近縁種が増えるかもしれません。
タマゴタケが属するテングタケ属のキノコは卵形状の構造(外被膜)中にある小さなキノコが卵を破って伸長します。卵はツボとなって残ります。このツボの性状が脆いと傘の上にイボイボとなって残り、硬いツボであれば破片となって傘の上に残ることもあります。生態的にはほとんどが樹木と外生菌根を作ると考えられていますが、一部は腐生性の様式も持つと言われています。また、毒キノコが多いことでも有名です。殺人の有罪判決が出されたオーストラリアの事件で使われたタマゴテングタケ、真っ白なドクツルタケ類、キタマゴタケによく似たタマゴタケモドキ、フクロツルタケなど死亡例がある猛毒キノコが多く含まれます。絵本などのモチーフに使われるベニテングタケなども有毒です。
タマゴタケは比較的見分けが付きやすいため、食用にしている人もいますが、キノコは類似種も多く同定は難しいため、安易に野生キノコを食することはきわめて危険です。
野生キノコを利用する際は、必ず最新の知識を持った経験の豊富な専門家の指導のもと行って下さい。
平尾信三氏(NPO法人千葉県森林インストラクター会会員・日本菌学会終身会員)
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